感染性胃腸炎|滋賀県大津市の内科・消化器内科・リハビリテーション科|日吉台診療所

〒520-0112滋賀県大津市日吉台4丁目15−1
077-579-3833
ヘッダー画像

感染性胃腸炎

感染性胃腸炎|滋賀県大津市の内科・消化器内科・リハビリテーション科|日吉台診療所

感染性胃腸炎とは

感染性胃腸炎とは

感染性胃腸炎は、ウイルスや細菌、寄生虫などの病原体が、食べ物や人の手を介して口から体内に入ることで発症する、消化管の感染症です。胃腸の粘膜で病原体が増殖して炎症を起こし、胃腸の働きが障害されることで、嘔吐や下痢、腹痛といった様々な症状を引き起こします。原因となる病原体の種類が多く、それぞれに流行する季節や特徴があります。

感染性胃腸炎の原因となる主な病原体

感染性胃腸炎は、大きく「ウイルス性」と「細菌性」に分けられます。

ウイルス性胃腸炎

冬場に流行のピークを迎えることが多く、感染力が強いのが特徴です。

ノロウイルス

感染性胃腸炎の最大の原因ウイルスで、特に冬(11月~2月)に猛威を振るいます。非常に感染力が強く、ごく少数のウイルス粒子でも感染が成立します。アルコール消毒が効きにくいという特徴もあります。カキなどの二枚貝の生食による食中毒のほか、感染者からの二次感染で爆発的に広がることがあります。

ロタウイルス

かつては乳幼児における重症胃腸炎の主な原因でしたが、ワクチンの定期接種化により患者数は減少しています。冬から春にかけて流行し、突然の嘔吐と、米のとぎ汁のような白っぽい水様便が特徴です。

アデノウイルス

一年を通して見られますが、夏に流行のピークがあります。「プール熱(咽頭結膜熱)」の原因としても知られますが、胃腸炎症状を引き起こす型もあります。

細菌性胃腸炎(食中毒)

高温多湿になる夏場(6月~8月)に発生が増える傾向があります。

カンピロバクター

近年、発生件数が最も多い細菌性食中毒です。主な原因は、加熱が不十分な鶏肉(鶏刺し、たたき、バーベキューなど)です。潜伏期間が2~7日と比較的長いのが特徴です。

サルモネラ菌

生卵や加熱不十分な肉(特に鶏肉)が主な原因となります。ペットの爬虫類(ミドリガメなど)から感染することもあります。

腸管出血性大腸菌
(O157、O111など)

強力な「ベロ毒素」を産生し、激しい腹痛と頻回の水様便、その後に出血を伴う下痢(血便)を引き起こします。特に乳幼児や高齢者では、腎臓などに重い障害をもたらす「溶血性尿毒症症候群(HUS)」という合併症を起こす危険があるため、注意が必要です。加熱不十分な牛肉などが原因となります。

黄色ブドウ球菌

この菌は食品中で増殖する際に、熱に強い毒素(エンテロトキシン)を作り出します。食事をしてから1~5時間という短い時間で、激しい吐き気と嘔吐が起こるのが特徴です。調理後に時間が経ったおにぎりや弁当などが原因になりやすいです。

感染性胃腸炎の症状

原因となる病原体によって潜伏期間や症状の強さは異なりますが、共通してみられる主な症状は以下の通りです。

  • 吐き気・嘔吐:突然始まる強い吐き気が特徴で、特にウイルス性の場合は嘔吐が主症状となることがあります。
  • 下痢:水のような便(水様便)が1日に何度も出ます。細菌性、特に腸管出血性大腸菌などでは血液の混じった便(血便)が見られます。
  • 腹痛:お腹が差し込むように痛んだり、しぶるような痛み(便意があるのに出ない)があったりします。
  • 発熱:37~39℃程度の熱が出ることがあります。細菌性では高熱になることも珍しくありません。
  • 全身症状:頭痛、悪寒、筋肉痛、だるさ(倦怠感)などを伴うこともあります。

感染性胃腸炎の検査

多くの場合、症状や食事内容、周囲の流行状況などの問診で診断がつくため検査は不要な場合が大半です。原因を特定したり、重症度を判断したりするために以下の検査が行われます。

便検査

便から原因となるウイルスや細菌を検出します。ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスには15分程度で結果がわかる迅速検査キットがあります。細菌の場合は、菌を育てる培養検査を行うため、結果判明に少なくとも数日かかります。

血液検査

体の炎症の程度(白血球数やCRPなど)や脱水の有無、電解質のバランスなどを調べます。

画像検査

症状が感染性腸炎として非典型的な場合に、虫垂炎など他の病気と区別するために腹部超音波検査やCT検査を行うことがあります。

感染性胃腸炎の治療

感染性胃腸炎の治療の基本はウイルス性でも細菌性でもまずは「安静、水分補給、食事療法」の3つです。

安静と水分補給

下痢などの症状が続いている間は無理をせず、学校や仕事を休んでゆっくり体を休ませましょう。そして、脱水を防ぐために水分補給が非常に重要です。水分は、水やお茶だけでなく、失われた電解質も補給できる経口補水液が最も適しています。吐き気が強く、飲水がまともにできない場合には点滴を行うことで体内の水分を補充します。

食事療法

吐き気が強い間は無理に食べる必要はありません。症状が落ち着いてきたら、おかゆやよく煮込んだうどん、すりおろしリンゴなど、消化の良いものから少しずつ始めましょう。脂肪の多い食事や、冷たい飲み物、刺激物は胃腸の負担になるため、回復するまで避けるようにしましょう。

薬物療法

  • 対症療法
    ウイルス性胃腸炎に特効薬はないため、症状を和らげる薬が中心となります。処方されるのは、腸内環境を整える「整腸剤」や、吐き気を抑える「制吐剤」などです。
  • 抗菌薬(抗生物質)
    細菌性胃腸炎が原因でかつ、症状が重い場合や免疫が弱っている場合にのみ使用されます。抗菌薬を使用することでの副作用のリスクがあるため、自己判断で服用してはいけません。
  • 下痢止めについて
    自己判断で市販の下痢止め薬を使うのは避けてください。下痢は病原体を体外に排出する重要な防御反応であり、無理に止めるとかえって回復を遅らせる原因になります。

感染対策

ご自身やご家族が感染性胃腸炎にかかった場合、感染を拡大させないために以下の点を徹底してください。

  • 手洗い
    トイレの後、おむつ交換の後、調理や食事の前には、必ず石鹸流水30秒以上かけて丁寧に手を洗いましょう。ノロウイルスにはアルコール消毒が効きにくいため、石鹸での物理的な洗浄が最も重要です。
  • 嘔吐物や便の適切な処理
    ①使い捨てのマスクと手袋を着用し、窓を開けてしっかり換気します。
    ②ペーパータオルなどで、外側から内側に向けて静かに拭き取ります。
    ③拭き取ったものや使った手袋は、ビニール袋に密閉して捨てます。
    ④汚れた床や衣服は次亜塩素酸ナトリウム(家庭用の塩素系漂白剤を指定の濃度に薄めたもの)で消毒します。熱に強い衣類などは、85℃以上で1分以上の加熱も有効です。
  • タオルの共用は避ける
    手拭きタオルやバスタオルは、必ず別のものを使いましょう。
  • 入浴
    症状のある人は、他の家族への感染を防ぐため、最後に入浴するようにしましょう。

まとめ

感染性胃腸炎は頻度の高い病気ですが、正しく理解していないと脱水により重症化することや、周囲に感染を広げてしまうことがあります。特に小児やご高齢の方においては注意が必要であり、「元気がない」、「普段と様子が違う」などがあれば早めに受診することが重要です。また、下痢が長引く場合には感染性胃腸炎以外の病気が想定され、大腸カメラでの評価が望ましいです。

トップに戻る