感染性胃腸炎
感染性胃腸炎

感染性胃腸炎は、ウイルスや細菌、寄生虫などの病原体が、食べ物や人の手を介して口から体内に入ることで発症する、消化管の感染症です。胃腸の粘膜で病原体が増殖して炎症を起こし、胃腸の働きが障害されることで、嘔吐や下痢、腹痛といった様々な症状を引き起こします。原因となる病原体の種類が多く、それぞれに流行する季節や特徴があります。
感染性胃腸炎は、大きく「ウイルス性」と「細菌性」に分けられます。
冬場に流行のピークを迎えることが多く、感染力が強いのが特徴です。
感染性胃腸炎の最大の原因ウイルスで、特に冬(11月~2月)に猛威を振るいます。非常に感染力が強く、ごく少数のウイルス粒子でも感染が成立します。アルコール消毒が効きにくいという特徴もあります。カキなどの二枚貝の生食による食中毒のほか、感染者からの二次感染で爆発的に広がることがあります。
かつては乳幼児における重症胃腸炎の主な原因でしたが、ワクチンの定期接種化により患者数は減少しています。冬から春にかけて流行し、突然の嘔吐と、米のとぎ汁のような白っぽい水様便が特徴です。
一年を通して見られますが、夏に流行のピークがあります。「プール熱(咽頭結膜熱)」の原因としても知られますが、胃腸炎症状を引き起こす型もあります。
高温多湿になる夏場(6月~8月)に発生が増える傾向があります。
近年、発生件数が最も多い細菌性食中毒です。主な原因は、加熱が不十分な鶏肉(鶏刺し、たたき、バーベキューなど)です。潜伏期間が2~7日と比較的長いのが特徴です。
生卵や加熱不十分な肉(特に鶏肉)が主な原因となります。ペットの爬虫類(ミドリガメなど)から感染することもあります。
強力な「ベロ毒素」を産生し、激しい腹痛と頻回の水様便、その後に出血を伴う下痢(血便)を引き起こします。特に乳幼児や高齢者では、腎臓などに重い障害をもたらす「溶血性尿毒症症候群(HUS)」という合併症を起こす危険があるため、注意が必要です。加熱不十分な牛肉などが原因となります。
この菌は食品中で増殖する際に、熱に強い毒素(エンテロトキシン)を作り出します。食事をしてから1~5時間という短い時間で、激しい吐き気と嘔吐が起こるのが特徴です。調理後に時間が経ったおにぎりや弁当などが原因になりやすいです。
原因となる病原体によって潜伏期間や症状の強さは異なりますが、共通してみられる主な症状は以下の通りです。
多くの場合、症状や食事内容、周囲の流行状況などの問診で診断がつくため検査は不要な場合が大半です。原因を特定したり、重症度を判断したりするために以下の検査が行われます。
便から原因となるウイルスや細菌を検出します。ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスには15分程度で結果がわかる迅速検査キットがあります。細菌の場合は、菌を育てる培養検査を行うため、結果判明に少なくとも数日かかります。
体の炎症の程度(白血球数やCRPなど)や脱水の有無、電解質のバランスなどを調べます。
症状が感染性腸炎として非典型的な場合に、虫垂炎など他の病気と区別するために腹部超音波検査やCT検査を行うことがあります。
感染性胃腸炎の治療の基本はウイルス性でも細菌性でもまずは「安静、水分補給、食事療法」の3つです。
下痢などの症状が続いている間は無理をせず、学校や仕事を休んでゆっくり体を休ませましょう。そして、脱水を防ぐために水分補給が非常に重要です。水分は、水やお茶だけでなく、失われた電解質も補給できる経口補水液が最も適しています。吐き気が強く、飲水がまともにできない場合には点滴を行うことで体内の水分を補充します。
吐き気が強い間は無理に食べる必要はありません。症状が落ち着いてきたら、おかゆやよく煮込んだうどん、すりおろしリンゴなど、消化の良いものから少しずつ始めましょう。脂肪の多い食事や、冷たい飲み物、刺激物は胃腸の負担になるため、回復するまで避けるようにしましょう。
ご自身やご家族が感染性胃腸炎にかかった場合、感染を拡大させないために以下の点を徹底してください。
感染性胃腸炎は頻度の高い病気ですが、正しく理解していないと脱水により重症化することや、周囲に感染を広げてしまうことがあります。特に小児やご高齢の方においては注意が必要であり、「元気がない」、「普段と様子が違う」などがあれば早めに受診することが重要です。また、下痢が長引く場合には感染性胃腸炎以外の病気が想定され、大腸カメラでの評価が望ましいです。
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