
便秘薬について
便秘は頻度の高い症状の一つであり、便秘が長期間に渡って続くとQOL(生活の質)の低下を招きます。便秘薬には市販のものも含めると多数ありますが、それぞれの特性を知っておくことで便秘を上手くコントロールすることができます。便秘薬には大きく分けて刺激性下剤、非刺激性下剤の2種類があり、それぞれの特徴を解説します。
刺激性下剤
刺激性下剤は腸管の蠕動を促進することで排便を促します。即効性があるため便秘にお悩みの方には好まれることが多いです。一方で耐性や依存性の問題があり、使用には注意が必要です。長期間にわたって毎日服用していると効き目が薄れてくることがあり、結果的に服用量が徐々に増えてしまいます。また、いきなり中止するとひどい便秘になってしまうケースが多く、他の薬剤を併用しながらゆっくり減量する必要があるため時間を要します。 その他、センナや大黄が含まれている薬剤を連用することで腸が黒くなってしまう大腸黒皮症になってしまうことがあります。腸の動きが悪くなり、便秘や下痢などの症状を引き起こすことがあります。
こうならないために服用はできれば1週間に1~2回にとどめた方がよいとされています。上手に使うことができれば有用な薬剤であり、特に腸の蠕動が低下している方が頓用で使用する分には問題ないでしょう。 市販の漢方薬には大黄などの刺激性下剤の成分が含まれていることが多々あります。ご自身で購入される場合には成分を確認の上、必要に応じて医師や薬剤師にご相談ください。
代表的なものとして以下のものがあります。
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センノシド(プルゼニド)
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ヨーデル(センナ)
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ラキソベロン(ピコスルファート)
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大黄甘草湯
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麻子仁丸
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防風通聖散
非刺激性下剤
マグミット(酸化マグネシウム)
腸管内に水分を保つことで便を軟らかくする作用があります。古くからある薬剤ですが、便秘薬の第一選択として位置づけられています。便の状態により用量の調整が容易で副作用は比較的少ないとされています。ただし、腎機能が低下している方やご高齢の方では高マグネシウム血症により頭痛や嘔気を来す場合があります。そのため効果が不十分の場合には量を増やすより他の薬剤を併用する方が良いでしょう。
モビコール
マグミットと同様、腸管内に水分を保つことで便を軟らかくし、排便を促す作用があります。錠剤ではなく粉末を水に溶かして服用します。副作用は少なく、高齢者にも使いやすい薬剤ですが、マグミットと比較すると値段が高めです。
アミティーザ
従来の便秘薬と異なる作用機序をもつ上皮機能変容薬の中で最初に発売された薬剤です。アミティーザは小腸粘膜に作用し、腸管内に水分を保ちつつ内容物の輸送を高めることで便秘を改善します。マグミットで十分に効果が得られない方に良い選択肢となり、腎機能による制限がないことから高齢者にも使いやすい薬剤です。規格は12μg、24μgと2種類あり、便の状態によって調整が可能です。副作用として嘔気が出ることがあり、特に若年女性で出やすい傾向にあります。
リンゼス
アミティーザと同様、上皮機能変容薬に分類される薬剤です。腸管粘膜に作用し、便を軟らかくすると同時に痛覚過敏も改善する作用があります。従って、便秘だけではなく、過敏性腸症候群と言った病態による腹痛に対しても効果があるとされています。1日1回の内服で効果が得られますが、食前に服用する必要があります。副作用として下痢がありますが、その他に頻度の高いものはありません。
グーフィス
胆汁酸トランスポーター阻害薬という新しい機序の便秘薬です。胆汁の分泌を促すことで水分の分泌や腸管の蠕動を促進します。また、便意を促す作用があり、便意を感じにくい方には良い適応です。1日1回の服用で済みますが、食前に内服する必要があります。副作用として内服後に腹痛が出ることがあります。また、下痢が出現することがあり、必要に応じて減量します。
まとめ
このように便秘薬には様々な選択肢があり、患者さんの年齢や排便の状況に応じて推奨される薬剤が異なります。誤った使い方をしてしまうと治療に難渋することがあるため自己判断をせずに医師や薬剤師に相談するようにしましょう。
また、元々便秘ではない方が便秘になるケースや便秘が急に悪化するような場合には大腸がんなどの病気が隠れていることがあるため大腸カメラで確認することが勧められます。