胸部レントゲンをAIが診断してくれる?|日吉台診療所|滋賀県大津市の内科・消化器内科・リハビリテーション科

〒520-0112滋賀県大津市日吉台4-15-1
077-579-3833
ヘッダー画像

胸部レントゲンをAIが診断してくれる?

胸部レントゲンをAIが診断してくれる?|日吉台診療所|滋賀県大津市の内科・消化器内科・リハビリテーション科

近年、「AI(人工知能)」という言葉をよく耳にするかと思います 。スマートフォンの音声アシスタントやお掃除ロボット、車の自動運転技術など、私たちの暮らしはAIによってどんどん便利になっています 。このAIの力が、医療業界でも大きな注目を集めているのです 。

特に、病気の早期発見に欠かせない画像診断の分野で、AIは目覚ましい活躍を見せ始めています 。今回は、多くの方が健康診断などで受けたことのある胸部レントゲン検査をテーマに、AI診断がどのように行われ、私たちにどんなメリットをもたらしてくれるのか、そして今後の展望について、解説します 。

そもそも胸部レントゲン検査って?

まず、胸部レントゲン検査について簡単に解説します 。X線を胸部に照射して、肺や心臓、大血管、骨などの状態を画像として映し出す検査です 。肺炎や肺結核といった感染症、肺がんなどの腫瘍、心臓の大きさの異常(心肥大)、胸に水がたまる胸水、

肋骨の骨折など、さまざまな病気の発見の手がかりとなります 。

被ばくを心配される方もいらっしゃいますが、胸部レントゲン1回の被ばく線量はごくわずかです 。例えば、私たちが自然界から1年間に浴びる自然放射線量(約2.4ミリシーベルト)と比べても、胸部レントゲン1回(約0.06ミリシーベルト)はごく微量です 。体に大きな負担をかけることなく、多くの情報を得られる非常に有用な検査と言えます 。

AIはレントゲン画像をどうやって「見る」の?

では、AIはどのようにしてレントゲン画像を診断するのでしょうか 。その仕組みは、AIの「学習能力」にあります 。

医療で使われるAIは、「ディープラーニング(深層学習)」という技術を使い、膨大な数の胸部レントゲン画像を事前に学習します 。この学習データには、経験豊富な放射線科専門医が「ここに肺がんの疑いがある」「これは肺炎の影だ」「異常なし」といった正解を付けた、いわば「教科書付き」の画像が何十万、何百万枚も使われます 。

AIはこれらの画像を繰り返し学ぶことで、正常な肺と異常な影の違いや、病気ごとの特徴的なパターンを精密に認識できるようになるのです 。胸部レントゲンでは、心臓や横隔膜などと重なる部位は病変を見落としやすい箇所とされています 。

熟練した医師であっても、このような部位の病変は見落としてしまうことがあります 。AIは見落としが多い病変についても学習しているため、時には専門医以上の力を発揮することがあります 。

AI診断がもたらす3つの大きなメリット

AI診断の導入は、医療者および患者さんにとって多くのメリットがあります

見落としを防ぎ、診断精度が向上する

人間の目は、時に疲労や集中力の低下によって、ごく小さな病変や、骨や血管と重なって見えにくい淡い影を見逃してしまう可能性がゼロではありません 。一方でAIは疲れることがありません 。24時間365日、常に一定の高い精度で画像をチェックし、微小な影でも見つけ出すことができます 。これにより、医師が単独で診断する場合に比べて、肺がんなどの早期発見率が向上することが多くの研究で報告されています 。

診断時間が短縮され、すぐに結果がわかる

従来、撮影されたレントゲン画像は、放射線科医が11枚確認して診断レポートを作成するため、結果が出るまでに時間がかかることがありました 。特に、緊急を要する病気の場合、この時間は患者さんにとっても負担となります 。AIは、画像を読み込んでから1分以内で解析結果を提示できます 。これにより、診断プロセス全体がスピードアップし、肺炎や気胸(肺に穴が開いて空気が漏れる状態)などの重大な疾患を素早く診断できます 。

医師の負担を軽くする

画像診断を専門とする放射線科医は不足しており、一人の医師にかかる責任と労力は増える一方です 。また、日常診療の現場では、患者さんの診察を行いながら画像診断を並行して行うため、病気を見落としてしまうケースが少なくありません 。AIが一次的なチェック(スクリーニング)を担うことで、医師の負担は大幅に軽減されます 。医師は、AIが「異常の疑いあり」と判断した画像を重点的に確認したり、最終的な診断や治療方針の決定といった、より高度な専門知識が求められる業務に集中したりすることができます 。

AIの課題と限界

素晴らしいメリットがある一方で、AI診断にもまだ課題や限界があることを理解しておくのは重要です 。

AIの診断は100%ではない

最も大切なことは、AIはあくまで医師をサポートする道具であり、AIだけで最終診断が完結するわけではないということです 。現在の技術では、AIの判断が常に正しいとは限りません 。

偽陰性(ぎいんせい)

過去に学習したことのない非常に珍しい病気や、非典型的な現れ方をする病変は、AIが見逃してしまう可能性があります 。

偽陽性(ぎようせい)

逆に、病気ではないものを「異常の疑い」と判断してしまうこともあります 。偽陽性が多すぎると、患者さんは不必要な不安を感じたり、追加のCT検査などを受けたりすることになります 。これは患者さんにとって不要な被ばくや検査費用の負担へとつながります 。

そのため、AIの解析結果を経験豊富な医師が必ず確認し、患者さん個々の状態(年齢、症状、過去の病歴など)を総合的に考慮して、最終的な診断を下すというプロセスが不可欠です 。

責任の所在は?

もし、AIの判断ミスによって患者さんに不利益が生じた場合、その責任は誰が負うのかという問題も残っています 。AIを開発した企業でしょうか、それともAIを導入した病院、あるいはAIの結果を最終的に判断した医師でしょうか 。こうした倫理的・法的なルール作りは、現在も世界中で議論が進められている段階です 。

まとめ

胸部レントゲンのAI診断は、すでに多くの医療機関で導入が進んでおり、医療をより安全で、より質の高いものへと進化させています 。AIのサポートを受けることで、これまで見つけにくかった病気がより早期に発見され、多くの人の健康と命が救われる未来へとつながります 。当院では、そのような診療を目指して、肺がん検診や日常診療においてAI診断を導入しております 。何かご心配やご不明な点がありましたら、お気軽に医師、スタッフへお尋ねください 。

 

トップに戻る